2013年9月27日金曜日

(4)いじめ防止対策推進法に欠けているもの:「新」いじめ対策法に向けて~いじめ自殺遺族への15年取材から

いじめ防止対策推進法」が、今月28日から施行される。



出鼻をくじくようだが、この法律に対しては
いじめ自殺遺族から、物足りなさを指摘する声も聞こえてくる。



法律は第28条で、
生命を脅かすような重大事態が発生した場合は
学校や自治体に調査及び被害者側への報告を義務付けた。
附帯決議においては、調査機関に専門知識や経験を持つ第三者を参加させて
公平性・中立性を担保するよう努める方針も定められた。

附帯決議の方は法的拘束力はないため決して十分ではないが、
遺族の「知る権利」の観点からは前進といえよう。



だが問題なことに、この調査機関には、
いじめと自殺との「因果関係」の有無を判断する権限は与えられていない。



これでは、せっかく外部の者が調査に入っても
最終的に因果関係を認めるかどうかは、学校や自治体の意向に委ねられることになる。
学校側が認めなければ、遺族は裁判を起こして争わざるを得ない、
という構図は依然として残る。



98年に発生した福岡男子高校生いじめ自殺事件の遺族は、
「このままでは形だけの調査になり、学校側の隠ぺい体質は変わらない」と訴えている。



また、私個人としては、
第2条でいじめの定義を「児童対児童」の間で発生する行為に
限定したことも引っかかる。
「教師からのいじめ」は対象外とするのか?

文科省によるいじめ定義では
広く「一定の人間関係のある者」からの行為を対象にしていたが。
新しい法律はなぜ、狭めたのだろうか。







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2013年9月25日水曜日

ネット・リテラシー教育「受信者編」(新聞寄稿)

Photo_2



ある有名シェフが先日、インターネット上の口コミ系グルメランキングサイトに関して発言した内容が物議をかもした。自分の店に否定的なコメントが書き込まれたことに対し、「高級店に行き慣れていない庶民にウチの味は判断出来ない」と反論したのである。


 
確かに失礼な言い方だが、騒動は、この種のネット情報の信頼性をめぐる危うさをも問題提起した。味覚には個人差があり、自分の口に合わないとの理由で低評価を付ける客もいる、という可能性だ。昨年には、飲食店がグルメサイトでのランキングを上げるため「サクラ」に金を払い、高評価の口コミを書かせていたこ
とも発覚した。


 何かを調べたい時にまずネットで検索する、という人は多いだろう。だが、ネット空間を漂う無数の情報には、至るところに落とし穴もある。利用者は「ネット・リテラシー」を身に付けておくことが重要だ。


 ネット・リテラシーとは、「ネット上の情報を鵜呑みにせず、自分の頭で判断し活用する能力」である。ネット上では誰もが受信者にも発信者にもなれるこの時代、それぞれに求められる能力を2回に分けて解説していく。
まずはネット情報を受信するにあたり、どのような点に気をつけるべきか。無料かつ匿名で提供される情報は玉石混交だ。全く根拠のない大ウソが書かれている場合すらある。


 
信頼できるサイトを見分けるには、第一に、そのサイトがどんな「目的」で作られたものかを見る。意見を表明するためのブログや、商品やサービスの宣伝をするためのサイトであれば、主観や偏った情報が含まれることが多分にある。また、「この商品がおすすめ」と一見、中立的に紹介するサイトがあるが、そうした記事は、実は広告であることも少なくない。サイトに出資している企業を調べ、記事との関連性を探ってみよう。


 次にチェックするのは、そ
のサイトの「発信者」は誰か。「このサイトについて」というような項目で、自己紹介があるはずだ(なければその時点で信憑性は薄い)。発信しているのは個
人か企業か、あるいは官公庁か。公の機関が作ったサイトであれば、公式情報としての利用価値はある。サイト情報の問い合わせ先が記載されているかにも目を光らせたい。


 一般に信頼度が高いサイトは、新聞やテレビニュースなど、報道機関によるものだ。前述のように報道機関は情報を取捨選択して報じるが、個別の情報には「裏を取って」いる。政府や役所とパイプを持つ立場ならではの強みだ(たまに誤報もあるが)。報道機関のサイトにない情報は、
他の複数のサイトで真偽の度合いを確かめよう。また、「○○調査機関によると」という形でデータが紹介されていたら、出所の機関のサイトをたどり、誇張がないか、より有用なデータはないか確認するといい。


 オンライン百科事典「ウィキペディア」は多くの人が参照するが、専門家のみならず誰でも好き勝手に書き込め、情報の正確性は保証されていない。


 
「ネット=世論」ではないこともポイントだ。ネット上では、情報の転載・拡散が容易かつ急速に行なわれるため、特定の意見(仮にAとする)の数が実態より
も「多数派」に見えやすい。一方、意見Aに反対する人がネットに意見Bを書き込むと、A集団から激しいバッシングを受け炎上する。次第に意見B保持者は主張意欲を失い、ネット上では意見Aが主流として確立される。 


これは「沈黙の螺旋」と呼ばれる構図だ。ネット上に意見Bが見られなくなっ
たからといって、現実に意見B保持者がいなくなったわけではない。自分で情報を探索する特性上、ネットでは「好みの意見」にばかり接しがちだ。視野が狭くならないよう、意識的に多様な意見を入手しよう。


 さあ、初のネット選挙となった今年の参院選。立候補者の見かけ倒しのホームページ、威勢よく中身の伴わない書き込みなどに引きずられなかったか。有権者のネット・リテラシーが試される場は今後も増える。


(熊本日日新聞「論壇」2013.7.21寄稿に加筆)


・【関連】ネット・リテラシー教育「発信者編」


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2013年9月20日金曜日

「学校のいじめ・マスコミ対応の問題点と危機管理」講演

201308



「報道する立場から見た、いじめの問題点
~いじめ発生時、
学校はどう対応すべきなのか!?」をテーマに
講演を務めた。

兵庫県教育委員会 淡路教育事務所が主催した、
「学校経営(教頭)研究協議会 兼
教育委員等研修会」の一環。
小中学校の管理職や教育委員の方々、
約100人が参加。

・報道機関によるいじめ取材の難しさ
・学校側のマスコミ対応の問題点
・取材する立場から見た「いじめ対策」のあり方と
危機管理

…等について、お話させて頂いた。

ちなみに淡路島には以前も
「ネットいじめ」の講演で訪ねたことがあり
2度目の上陸である。

今回は夏まっただ中で、

島には民宿が立ち並び、ビーチは観光客で大にぎわい。
関西人にとっての淡路島は、
関東人にとっての江ノ島的存在なのだとお聞きした。
冒頭の写真から、海の澄んだ美しさがおわかり頂けるだろうか
(ガラス越し撮影のため、かすかに余計な物体が写り込んでおり)。



帰り際、お土産にと「あわじ大江のり」を頂いた。
お取り寄せで高い人気を誇る名品なのだとか。
楽しみに食することと致します!




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2013年9月14日土曜日

博士課程単位取得&SFC研究所就任&大学講義受付スタート!

この3年間在籍していた
慶應義塾大学大学院政策・メディア研究科後期博士課程。
この度、晴れて全単位を取得しました!



これにて学生生活は一区切りとなるが、
専門とする「メディアにおける青少年保護」の博士論文は
現在執筆中なので、今後も地道に研究を続けていく予定である。



また、今月付で
慶応大学SFC研究所 上席所員(訪問)に就任することとなった。
もっとも、立場はあくまで「訪問」なので、
活動領域は同大学に限定されるわけではない。



今後は
メディア・リテラシー教育、ソーシャルメディア論、SNSリテラシー、
青少年保護政策、映像制作とジェンダーなどの分野で、
私の経験がお役に立てそうな大学にて客員講義の御依頼があれば、
出来るだけ検討させて頂きませう。
詳細&お問い合わせは
渡辺真由子公式サイトMAYUMEDIA「大学講義」にて!







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2013年9月11日水曜日

いじめとジェンダー、メディアの関係(雑誌寄稿)

「あんたは気持ち悪いから、死んでええわ」。
芸人が舞台上で相方に言い放つ。そして、手拍子を取り始めた。
「死―ね、死―ね、死―ね……」。
観客たちも、笑いながら手を打ち鳴らす。「死―ね、死―ね、死―ね……」



あるお笑い公演を見たときの一幕だ。芸人たちのネタは、相手の外見やコンプレックスをあざ笑ったり、見下したりすることでウケを狙う内容が多い。聞き手の優越感をくすぐるので、笑いがとりやすいからだ。この種のお笑いが、日常的にメディアを通して多くの子どもの目に触れ、「いじめ」のヒントを与えている。



体の太さや髪型、背の低さ、髪の毛の薄さなどは本来、身体的「特徴」に過ぎない。その特徴を「欠点」と決め付け、からかいの対象とすることは即ち、「この特徴を持っている人はバカにしてもいいんですよ」というメッセージである。それは子どもの価値観に浸透し、行動パターンを規定する。「あいつの髪型は変わっているから」「あの子の口は臭うから」自分たちより劣っている。だから、いじめてもいいのだと。



中学時代にいじめられたという高校1年生のA子は、こう指摘する。
「いまの笑いって人を叩いたり、自分がその人より上にいたりすることを前提に成り立っている。そういうのを見たら現実の場に持ち込んでしまって、見下せる相手をいじめるんじゃないかな」



女子のいじめの場合、「ジェンダー(社会的・文化的な性のありよう)」が関わるケースも多い。最近の女子はまず「仲良しグループ」を作ったうえで、その内でいじめを行なう傾向がある。メンバーを一人ずつ順番にいじめのターゲットにすることで、結束を強めていくのだ。「いじめるのは嫌だと言ったら仲間はずれに
されるから、怖くて言い出せない。いつ自分がターゲットになるかと、毎日ビクビクしている」と、ある女子中学生は打ち明ける。



私たちの社会は女の子に対して、「気配りが出来るように」「みんなと仲良くしなさい」と求めがちである。逆に、意見をはっきり主張する自立心旺盛な子には「女の子なのに気が強い」「男勝り」とマイナス評価を与える。



幼い頃からこうしたジェンダー観を刷り込まれてきた女子たちは、学校内でも「和」を保つことに神経を尖らせ過ぎて、いじめをしてしまう。



もう1つ、女子のいじめとして特徴的なのは、顔立ちが可愛い子や男子にモテる子を、標的にしがちなことだ。そのような子に対して、「調子に乗ってんじゃねぇよ」と陰口を叩いたり、暴行を加えたりする。



「顔は女の命」というジェンダー観は、世間に依然として残る。メディアも美容整形特集を組み、可愛い女の子をもてはやす。外見至上主義ともいえる価値観を、女子は育つ過程で「学習」していくのだ。このため、外見が目立つ子に対して「自分より優れている存在」と嫉妬と脅威を感じ、足を引っ張ろうとする。




メディアやジェンダーが絡むいじめに対処するために、大人に出来ることとは何か。



最も重要なのは「メディア・リテラシー」の育成である。
「メディアの特質、手法、影響を批判的に読み解く」能力と、「メディアを使って表現する」能力の複合だ。
子どもが自分の頭で情報を判断できるようになるには、特に前者が早急に必要である。



子どもにメディア・リテラシーを教えるには、まず大人のあなたが、
メディアが子どもに与える影響を理解しておかねばならない。
冒頭のお笑い公演で、「死ね」コールに率先して手拍子をとり、
相方をブタ呼ばわりするコントに大口を開けて笑っていたのは、なんと大人たちであった。

笑う子どもをたしなめる親もいない。
お笑いに慣れてしまい、その異常さを感知できないのだろう。
子どもはそんな親の姿を見て、「やっぱりバカにしていいことなんだ」と学習する。



子どもと一緒にメディアに接しているときの親の振る舞いは、メディア・リテラシー教育のキーポイントだ。
例えば子どもとテレビを見ていて、他人を見下す言動や暴力表現が出てきたら、
「これは許されない行為だ」とか「こんなことは現実にはあり得ない」などとコメントしよう。
テレビに没頭する子どもを冷静にし、番組を客観視させる。
そこで繰り広げられている内容を「普通のこと」と認識するのを防ぐ効果があるのだ。



また、メディアが女性について「愛想良くあるべき」「出しゃばるのはみっともない」といった論調で描いていたら、
「性別による決めつけはおかしい」「あなたらしさが大事」と説明しよう。



「どうしてメディアでは、女の子の外見が重要視されているの?」と問いかけ、
社会に潜むジェンダーの偏見に気付かせるのもいい。



つまり、メディア・リテラシー教育で重要なのは、大人が子どもに「一歩引いた目線」を提供することだ。
子どもがメディアを真似て軽々しくいじめを行なわないよう、情報を鵜呑みにしない目を育んでいこう。



(教育雑誌『おそい・はやい・ひくい・たかい』寄稿)



【参考文献】

1



大人が知らない ネットいじめの真実


   (渡辺真由子著、ミネルヴァ書房)



 ◆中学道徳教材 採用文献 (3刷)












Photo_2


 『性情報リテラシー』 (渡辺真由子著)

 ・子ども達はメディアの性情報にどのように接し、

  自らの性意識・性行動に
どう反映させているのか?
 ・「性的有害情報対策」としてのリテラシー教育とは?

  ⇒メッセージ&目次







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2013年9月4日水曜日

(3)文科省がいじめに関して学校心理士に教えないこと:「新」いじめ対策法に向けて~いじめ自殺遺族への15年取材から

Photo_2



 「日本学校心理士会研修会」において
 文部科学省初等中等教育局児童生徒課が行った
 講演内容を
 関係者の方から入手した。



「いじめ・体罰への対応について~学校心理士への期待~」と題された講演。
レジュメには、いじめの問題に関する緊急調査結果や文部科学省の取り組み、
いじめを理解するための生徒指導理論が紹介されており、なかなか読み応えがある。



一方で気になる点も。
「いじめの状況」を概観する項目において、紹介されているデータは
「いじめの認知(発生)件数・率の推移」のみ。



これだけ?



「いじめの後に自殺した件数」は出さないのか?



もちろん、
いじめと自殺の因果関係が定まっていなければ
やすやすと「いじめ自殺」として統計がとれない事情はあるだろう。
それでも、
「自殺者がいじめに遭っていたと報道された事案数」や
「いじめが自殺の原因として争われた訴訟数」を紹介することは出来たはずだ。



ただでさえ、学校側は在校生の自殺を「不慮の事故死」として計上したがり、
「自殺数」の実態が表に出にくい傾向がある。
2012年に兵庫県川西市で
いじめを受けていた県立高校2年の男子生徒が自殺した際も、
学校側が「不慮の事故」と表現することを遺族に頼んだ件は記憶に新しい。



ましてや学校心理士といえば、
スクールカウンセラーや養護教諭として
子どもを援助することが期待される立場である。
この人々に、いじめが子どもを死に至らしめる深刻な実態を知らせることは
大きな意義があろう。




20130826_2文科省の対応を、
いじめで子どもを亡くした親は
どう見たか。




98年に発生した福岡男子高校生いじめ自殺事件の遺族。
やはり息子の死は「不慮死」として処理されている。
今回の講演内容に対し、こんな手紙を送ってこられた。



「文科省の守りの姿勢にもうんざりです。
末端の教師はほとんどが理解することなく
子ども達を教育しているのではないでしょうか?」



講演に参加した学校心理士の1人は
「自分たちの施策の羅列で、心に響かない」と感想を述べていた。



「いじめ」について、いま現場の教育者たちに何を伝えるべきか。
国として改めて考えてもらいたい。









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