2014年1月31日金曜日

ネットいじめ講演@世田谷区&呉市

去る人権週間に、
東京都世田谷区のイベントで記念講演を務めた。
世田谷区教育委員会事務局の主催。



「ネットいじめ~逃げられない子どもたちを救うために~」と題し、
ネットいじめの現状や、対策としての応急処置、根本解決に向けた方法を
お話させて頂いた。



何を隠そう、
私は学生時代に世田谷区に住んでおり、
区の親善大使としても活動しておりました。
何かと思い出深い土地なのである。



講演後には、いじめをテーマにした映画の上映が。
阿部寛氏が主演する『青い鳥』。
いじめ加害者の「責任の取り方」を考えさせる内容で、
是非多くの子どもや保護者に見てもらいたい作品だ。



主催者の方からは後日、
「『現代社会の課題がよくわかった。是非、この講演で学んだことを
子ども達に伝えたい』『子どもの人権について考えさせられる良い機会になった』
等々の感想が多くの来場者から届き、大変好評でした」と
御連絡を頂いた。お役に立てたのであれば何よりです。





続いて、広島へとひとっ飛び。
呉市人権センターの主催による「ヒューマンフェスタ」で、
「ネットいじめから子どもを守る!」と題し、お話させて頂いた。



呉市はLINE絡みの少女死体遺棄事件が発生した土地でもあり、
シッカリ伝えねばと気合が入る。
講演後は多数の御感想をお寄せ頂いた:



・ネットいじめのこわさを知り、こどもだけでなく大人も被害にあわないように知識を持つことの大切さを知った。いじめをする子どもへの根本的な対応を社会でしていく必要を感じた。



・現代社会の問題になっているネットを詳しく知ることができてとても勉強になりました。ネットからくるいじめは、底なしのように感じました。感情のない文字だけの言葉が簡単に出やすくなった現代の象徴がネット社会だと思います。



・大変参考になりました。PTA役員会で共有したいと思います。



・とてもわかりやすかったです。知っていると思うことの奥にもまだ知らないことがあり勉強になりました。お笑い番組等日頃やりすぎだと感じておりましたから、私の感覚が間違えではないとわかりました。まず、子どもより大人がメディア・リテラシーを心がけなければならないと強く感じました。ありがとうございました。



・いじめはなくさなければならない。ネット社会の現在、考えなくてはならない事がたくさんありますね。とてもよくわかりました。



・効果的な解決策というのがよく理解できた。子どもの人権についてわかりやすかった。声が聞き取りやすかった。



・現在の社会に密着した内容で今後取り組んでいかないといけない内容でも合ったので参考になりました。



・タイムリーな話題で、大変、わかりやすい内容であった。中・高生や大学生、小中高の保護者が学ぶべき有意義な内容でもある。




……等々、他にも沢山の声を頂き、恐縮です。



関係者・参加者の皆さま、ありがとうございました!







【参考文献】
最新刊!性教育とメディア・リテラシー

Photo_2



『性情報リテラシー』


・子ども達はメディアの性情報にどのように接し、
 自らの性行動・性意識にどう反映させているのか?

・「性的有害情報対策」としての
 リテラシー教育はどうあるべきか? 



 




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2014年1月28日火曜日

「ネット・SNSが変える子どものコミュニケーション」講演(FMヨコハマ)

「ネット・SNSは子どものコミュニケーションをどう変えたか」をテーマに
講演を務めた。

コンサルティング会社
HRインスティテュートによる社会貢献事業の一環。
「子どもの未来を考える~子どもを取り巻く環境変化と大人として今できること~」
題されたセミナーである。
場所は六本木の東京ミッドタウン。オサレですねえ。



子どもを取り巻く環境変化を知る、という趣旨のもと、
私は「ケータイ、スマホと子どもたち」についてお話。
ネットいじめ、悪ふざけ画像、性被害の3点に関し、
現状とネット・SNSリテラシー対策を解説させて頂いた。



特に、
「ネット・SNSが変える子どものコミュニケーション」の注目点として

・臆病化
・相互監視社会→SNS中毒
・性情報への容易なアクセス

……について述べた。



IT企業の方や大学教員の方などが多数参加され、
活発な質疑応答が。

続いて行なわれたグループディスカッションも、
「子どもの未来に向けて、大人として今できることは何か?
どんな社会を構想し、創り出していくべきか?」をテーマに
大いに盛り上がりました。



講演の模様は、
ラジオ「FMヨコハマ」の番組で放送されたらしい
あら、知らんやった……。







【参考文献】
最新刊!性教育とメディア・リテラシー

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『性情報リテラシー』


・子ども達はメディアの性情報にどのように接し、
 自らの性行動・性意識にどう反映させているのか?

・「性的有害情報対策」としての
 リテラシー教育はどうあるべきか? 



 




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2014年1月24日金曜日

メディア表現の影響と「明日、ママがいない」

批判が巻き起こっている日本テレビ系ドラマ「明日、ママがいない」。
私も第二話を見てみた。


結論から言えば、多くの人に見てもらいたい良作だと思う。
児童養護施設に暮らす子ども達が様々な障壁に直面する様や
トラウマに苦しむ様を、
「子ども側の視点」に徹底して寄り添いながら描いている。
かといって単に「可哀想な存在」として扱うのではなく、
所々にユーモアを効かせ、彼女ら彼らの生命力や逞しさすら感じさせる内容だ。


ドラマには、養護施設の職員が入所する子どもに暴言を吐く場面などがあり、
実在する病院や養護施設関係団体が
「施設勤務者や入所者への誤解や偏見を生む」と強く抗議している。


だが、ドラマ中のそうした職員の言動は、
子どもの目から見た「悪」として表現されている。
里親のエゴや一般家庭の子どもによる中傷、といったエピソードに関しても、
(それらが現実にあり得るかどうかは別にして)
あくまで「許されないもの」として描いている。


メディアの影響という観点から問題になるのは、
その作品が持つ「メッセージ性」である。
ある現象を肯定的に伝えるか、否定的に伝えるか。
例えば、反社会的な行動を「カッコいい」「面白い」という文脈で表せば、
演出だとしても受け手に与える悪影響は否定できない。


そのような意味で、「明日、ママがいない」は
あくまでフィクション作品の範疇に収まるもので、
放送自粛の必要はないと考える。
むしろ「子どもたちの視点から<愛情とは何か>を描く」という
初志を貫き、きっちり最後まで放送して欲しい。


メディア表現の影響問題については
折しも先日、新聞に寄稿したところだったので
御参考までに掲載しよう:


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【メディアの暴力表現は何が問題か】

 


この年末年始に放映された大型バラエティ番組の中に、信じられない光景を見た。芸人たちが失言するたびに罰として尻を叩かれる、1人の芸人の身体を洗濯挟みでつねったり、熱湯につけたりして、嫌がる様子を皆で笑う……。目をそむけたくなる内容ばかりだ。


私が信じられないと感じたのは、暴力表現のひどさに対してというより、「いまだに」このような表現がおおっぴらに放映されている現実に対してだ。メディアの暴力表現がはらむ様々な問題点については、かねて方々で指摘されている。改めて代表的な3つの点を確認したい。


第一は、いじめとの関連性だ。周知のように子どもたちは、バラエティ番組のネタをすぐに仲間内で取り入れる。人生経験が少ないだけに、テレビの世界で行われている内容について善悪を吟味することなく「カッコいい」「憧れ」と感じてしまうのだ。


だが、「面白くするための演出」という大義名分にくるんだテレビの暴力表現の数々は、子どもたちにいじめのヒントを与えうる。「こんな風にからかうと、もっと面白い」と教えているようなものだ。目の前で人がバカにされる様子を集団で眺めて楽しむという番組の構図も、いじめを傍観する姿勢を肯定しているかに思わせる。


私がいじめ問題を取材した際、ある女子中学生は「メディアの模倣犯は出てきていると思う。過激な暴力表現をテレビで見て、同じようなことがカッコいいと思う子もいる」と語っていた。


第二は、暴力表現そのものが及ぼす影響である。内閣府が1999年に報告した「青少年とテレビ、ゲーム等に係る暴力性に関する調査研究」によれば、テレビの暴力シーンへの接触が多い子どもほど、「他人を叩く、殴る、蹴飛ばす」直接的暴力、「相手の傷つくようなことを言う」間接的暴力ともに、経験している割合が高い。


一方、被害を受けた者の辛さに対する共感性は低くなるという。暴力描写を何度も見るうちにそれが「普通のこと」に思え、暴力への抵抗感が薄れるのだ。アメリカで行なわれた長期調査でも、子ども時代に暴力表現を多く見た者ほど、大人になってから攻撃的な言動を取る傾向が明らかになった。


第三は、「笑い」と結びつける危険性について。バラエティ番組に見られるお笑いネタの多くは「優越型」と呼ばれるタイプである。相手の外見やコンプレックスをあざ笑ったり、見下したりすることでウケを狙う内容を指す。このタイプの笑いは、例えば体の太さや背の低さといった身体的特徴に過ぎないものを「欠点」と決め付け、からかいの対象とすることに罪がある。「こういう人はバカにしてもいいんですよ」といった誤ったメッセージを、見る者に送っているからだ。


笑いには「救済型」もある。ある対象を笑い飛ばすことで、その対象からの圧力を跳ね返そうとするものだ。1960~80年代の北米では、黒人や女性、同性愛者のコメディアンがショービジネスに進出し、自分たちへの差別や偏見を痛烈に皮肉った。「オレの肌が黒くて何が悪い」と開き直り、バカにする人たちをバカにした。そうすることで、社会的抑圧から自分自身を「救済」したのだ。残念ながら、日本のお笑いにはほとんど見られない。


テレビ番組の暴力表現について、業界は自主規制で対応している。第三者機関の放送倫理・番組向上機構(BPO)は2007年、バラエティ番組の罰ゲームなどに関し「青少年は放送内容を『社会的に肯定されている』と受けとめやすい」と指摘。各局に対応を求めたが、過激な暴力表現はなおも見られる。このままでは国の介入による法規制を招き、テレビ業界は自らの首を絞める結果になりかねない。


受け手の姿勢も重要である。親がテレビの暴力表現に笑っていては、我が子に「友達の悪口を言うな」と注意しても説得力がない。冒頭のバラエティ番組は高視聴率を獲得した。「政治のレベルは国民のレベル」と言われる。メディアを育てるのも同様に、我々受け手の意識次第であろう。




��熊本日日新聞『論壇』、2014年1月19日寄稿) 


*追記*
本記事は膨大な数のアクセスを頂き、
Yahoo!ニュースのBuzz記事に認定されました。



【参考文献】




Book3オトナのメディア・リテラシー
         (リベルタ出版)  
◆大学入試 出題文献 
◆学研小論文模試 出題文献






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2014年1月17日金曜日

「児童ポルノ禁止法改正案と創作物」報告@ジェンダー法学会

ジェンダー法学会学術大会にて報告を行なった。
「メディアにおける『創作物の性表現』と『現実の性被害』との関係性
 ~児童買春・児童ポルノ禁止法改正案をめぐって」。

概要は下記の通り:

1.児童買春・児童ポルノ禁止法改正案と創作物
2.創作物の性表現と現実の被害事例
(1)創作物による実在児童の権利侵害

(2)性犯罪における創作物の利用
3.性表現の影響に関する研究

(1)実写版ポルノグラフィ-の影響研究
(2)創作物の性表現の影響研究

(3)性表現の影響研究の限界
4.性表現規制の今後の方向性

▶発表スライドはこちら(参考文献別紙)

▶概要版はこちら

▶全文レジュメはこちら

会場の法学者や弁護士、現職議員の方々からは
「与党案は拡大解釈されないか」
「性表現物の展示方法への規制はどうあるべきか」
「海外の性表現規制はどうなっているのか」
等、活発な質疑が寄せられ、時間をオーバーするほど。
「是非もっと研究を進めてほしい」との声も多く頂いた。
有難うございます。

ちなみに今回の学会大会には、
福岡で1989年に提訴された全国初のセクハラ裁判に
携わった弁護士の方々も参加されていた。

実は私もテレビ局報道記者時代、
裁判から10年の節目に原告女性を取材し、「ニュースステーション」で特集を放映した。
当時を思い出すと感慨深い。
福岡セクハラ裁判の取材については
こちらで少し言及しており。

【参考文献】

103『性的有害情報に関する実証的研究の系譜
~従来メディアからネットまで』

情報通信学会誌103号

・性的有害情報が与える影響研究に関して、
 海外国内の最新状況を概観(児童ポルノ・創作物含む)
   ⇒要旨はこちら



最新刊!性教育とメディア・リテラシー



『性情報リテラシー』


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・「性的有害情報対策」としての
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2014年1月11日土曜日

【新春】対談・いっこく堂氏と「ネットと人権」(毎日新聞)

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そろそろお正月ムードが薄れていくのが
何やら物悲しいですね。
せめてここで一つ、新春らしい話題をお届けします!



といっても
昨年末の出来事なのだが、
腹話術師のいっこく堂氏と対談をさせて頂いた。



「10代のネットと人権」がテーマ。
携帯電話やスマートフォン、LINEなどによる
ネットいじめや悪ふざけ画像、性被害といった子どもに多いトラブルの現状や、
対策としてのネット・リテラシー教育についてお話。



ネットサービスを提供する企業や国に対する私からの提案として、
「大人へのモラル教育の必要性」についても述べている。



今回の対談は
毎日新聞の子ども向け媒体「毎日学生新聞・15歳のニュース」に
昨年12月21日付で掲載されたもの。
この時期はバタバタしており、
ブログでの御報告が追い付かず恐縮です。



ちなみにいっこく堂氏、
人柄の温かさが伝わってくるキュートな方でした!
年明けに
尿管結石であることが報じられたが、
一刻も早いご快復をお祈りしています。




最新刊!性教育とメディア・リテラシー
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『性情報リテラシー』



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2014年1月7日火曜日

性教育にメディア・リテラシーを!(新聞寄稿)

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明けましておめでとうございます。
今年もご一緒に、「尊厳を重んじ合う社会」の構築に
取り組んで参りましょう!


私の今年の目標は、性教育の学習指導要領に
「性情報リテラシー」を盛り込むこと。
青少年と性情報をめぐる現状をルポした先日の記事には非常に多くのアクセスを頂き、
予想を上回る反響に驚いている。


続いて今回は「対策編」をお届け。
性教育にメディア・リテラシーを導入するとは、どういうことなのか?
御参考になれば幸いである。


なお、当ブログで紹介しているエピソードはごく一部。
より赤裸々な若者の本音は、最新刊『性情報リテラシー』でご確認頂きたい。
メディアの性情報の歴史と内容分析や、男性向けメディアと女性向けメディアによる性的メッセージの違いなども検証している。

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【性教育にメディア・リテラシーを!】

「いま振り返ると、メディアの性情報には少なからず影響を受けたかなと思いますね」。私の性とメディアに関する調査を機に、自分の性意識や性行動がメディアと結び付いていることを初めて自覚した、という大学生が多かった。子ども時代に戻れるなら、どんな性情報に接したいかを聞いてみた。


 「18歳以下にも、ポルノ情報を出していいと思う」とA男(21)。中学1年からAV(アダルトビデオ)を見始めた。女優が玩具を使った愛撫を喜んでいたので、実際に交際相手にやってみたら嫌がられた経験がある。「子どもでも、現実にはAVを見ていることがあるわけじゃないですか。だから、ちゃんとしたエッチのやり方を教えるビデオもあった方がいい。ソフトなテクニックや避妊のハウツーとか。自分はいきなり過激なAVを見たから、それが理想みたいになってしまった」


 メディアの性情報が現実のニーズに即していないと感じるのは、女子も同じだ。「男性誌の特集は『女を落とす方法』という内容ばかり。もっと『相手を思いやるように』とか、精神面を重視してほしい」とA子(21)。「恋人が出来ない男子はコミュニケーション下手。コミュニケーション格差を埋める情報を発信する方が先」とも。


 B子(18)は、女性向けのメディアに偏りを感じる。「ドラマや漫画は、性行為を男性が主導するパターンが多いんです。何度も見ていると、それが普通なのかなと思って、自分も現実の場面で受け身になっちゃう」


一般メディアも性をタブー視せず、正しい性知識を提供すべきだと訴える。「新聞やテレビ、雑誌で、性行為に伴うリスクをもっと発信してほしい。性病や望まない妊娠とか、中絶について、常にそういうものと隣り合わせであることを知るべきだ」とB男(21)。高校時代、女友達が15歳で妊娠してしまったのを目の当たりにした。「安全日、危険日の情報やピルについて、メディアでもっと教えてほしい。モーニング・アフター・ピル(緊急避妊ピル)の入手方法も」


一般メディアは不特定多数の目に触れる機会が多く、親が子どもと一緒に接することも可能な媒体だ。影響力の大きさを生かし、性教育に必要な情報を積極的に発信していくことが期待されよう。


メディアの性情報をうのみにしないリテラシー教育も求められる。子どもたちが実際に接しているアダルト雑誌や漫画・ネットを、授業の教材として活用してみてはどうか。「女性が家に来るのはOKサイン」「女性のノーはイエス」といった情報には誤解があることを教えねばならない。「妊娠したら堕ろせばいい」と考えていたC男(20)は、中絶が女性の心身に与える負担を伝えると「知らなかった」と絶句していた。「膣外射精は避妊ではない」との点も強調する必要がある。


「ポルノを見ていても、誰がどうやってその情報を供給しているかなんて考えたことない」と言うのはD男(19)。「性的メディアは『売れる』ために、過激な表現や都合のいい情報を盛り込んでいる」などの「作り手の意図」を知らせ、情報を客観的に受け止められる目を養いたい。


家庭でも、E男(21)は「現実はAVとは違うのだからね」と母親から言われ、AVが演技だと初めて認識したという。息子の部屋に成人雑誌を発見して動揺した別の母親は、「こういう本と違って、生身の女性は性欲解消の道具じゃないよ。コミュニケーションが大事なんだよ、と思いきって息子に話しました」と語る。日頃から親子間で「女性と男性の性的考え方の違い」を話題にしたり、下ネタをジョークにしたりと、「性」をオープンに語れる雰囲気作りが重要だ。


「青少年の性とメディア」をめぐる取材結果は、拙著『性情報リテラシー』にまとめた。現状に照らせば、性教育にメディア・リテラシーを導入することは急務といえよう。「お互いの性を尊重しあうコミュニケーション」を育むため、子どもの性の問題に、正面から向き合ってみてほしい。

(熊本日日新聞『論壇』寄稿、2013.12.15)

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『性情報リテラシー』


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